今回はうつ病とは少し外れますが、昨年11月のジョギングの最中に負った大怪我のことを書こうと思います。
私の趣味の1つはジョギングで、学生時代からもう20年以上続けています。
走るのは基本的には週末のみで、距離は6〜15kmぐらいとその日によっていろいろです。
仕事で疲れている時でも、走った後の爽快感が憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれるのが好きです(それでもうつになってしまったのですが)。
うつになってからもジョギングは続けているのですが、気分をリフレッシュするはずが思わぬ怪我につながりました。
突然、転倒する
その日は夕方6時ごろに自宅を出発し、往復10kmほど走ろうと、折り返し地点をちょうど過ぎたくらいの時間帯でした。
私はいつもイヤホンでオーディオブックを聴きながら走るのが好きでした。
1時間以上走る時もあるので、オーディオブックを聴いていれば走りながら勉強できるので一石二鳥だと思っていました。
その日もイヤホンをつけながら走っていたのですが、ふとした拍子にアスファルトに足がつまずき、身体が前に倒れました。
「危ない!」とっさに手を前に出しましたが、間に合わず、次の瞬間には顔面に強い衝撃と痛みを感じました。
血が止まらない
「やってしまった・・・」
そんな思いで起き上がった私ですが、下を向くと大量の血がポタポタと垂れてきます。
血はどうやら口の中から出ているようです。こんなに大量の出血をしている自分を見るのは生まれて初めてでした。
「これはまずい。とにかく病院に行かなくては」。
そう感じた私は口を手で押さえながら歩き始めました。不幸中の幸いでしたが、先ほど、警察署の前を走ったのを思い出したのです。
警察署に駆け込めば、病院くらいは紹介してもらえるだろう。痛みで頭がぼんやりする中、私は警察署に向かって必死で歩きました。
唇の中を切ってしまった
「すみません。ジョギング中に転んでしまいました。ちょっとトイレをお借りしたいのですが」
大量の血を滴らせながら入ってきた私を見て、受付の警官は少し驚いたようですが、そこはプロらしく、「どうぞ」と冷静にトイレの場所を教えてくれました。
急いで鏡を覗いてみると、どうやら歯は折れていない様子。血は上唇の裏側からあふれてきており、どうやら唇の中を切ってしまったようです。
「すみません。唇を切ってしまったようなのですが、救急病院を紹介してもらえませんでしょうか」
警官は快く引き受けてくれ、付近の病院に3軒ほど電話をかけてくれました。ただ、どこも休日は医者がいないとのことで、受け入れてもらうことはできませんでした。
救急車を呼んでもらう
「もう救急車を呼んだ方が早いかもしれませんよ。そうすればどこかの病院には運んでもらえるはずです」
途方に暮れている私を見て、警官はこんな助け舟を出してくれました。
「なるほど、そういう手もあるのか」。私は警察署に助けを求めたのは正解だったと改めて感じました。
救急車を待っている間に、携帯電話で妻に連絡し、転倒して唇を切ってしまったことを説明。妻は少し驚いていましたが、搬送先の病院に来てくれると言ってくれました。
そして15分ほどで救急車が到着。3人の救急隊員が折りたたみの搬送用ベッドと共に警察署の中に入ってきました。
私は自力でも歩ける状態でしたが、せっかくなのでベッドで運んでもらうことにしました。
初めての救急車
行き先は都内の慶應大学病院に決まりました。私の自宅からはかなり離れていますが、休日の夜ということもあり、受け入れてくれそうな病院が限られているのかもしれないと感じました。
救急車に乗るのは人生で初めてでしたが、車内がやたらと冷え冷えとしていたのが記憶に残っています。
「すごいな」と感じたのは、やはり赤信号でも止まらずにノンストップで走り続けること。
この時ばかりは協力してくれている沿道のドライバーたちに感謝することしきりでした。
20分くらい走り続け、救急車は目的地にたどり着きました。私はベッドに乗せられたまま車を降ろされ、救急病棟に担ぎ込まれました。
若い研修医
私を診てくれたのは30代前半くらいの若い先生でした。
「あー、これは唇をざっくり切ってしまっていますね。縫った方がいいと思います」
幸運だったのは唇の外側には外傷はなく、切れたのは内側だけだったということ。おそらく、転倒した拍子に上の歯が唇の裏側に当たり、内側が切れてしまったようでした。
ただ、いざ唇を縫う段階になると、処置をしてくれたのはもっと若い、大学生のような先生2人でした。胸のバッチには「研修医」の文字が見えました。
私は嫌な予感を覚えました。昔、「ブラックジャックによろしく」という医療業界のマンガを読んだことがあるのですが、「休日の夜に事故にあってはいけない。なぜならその時間帯にいるのは若い医者ばかりで、助かるものも助からなくなる」ということが書いてあったことが突然、頭の中でフラッシュバックしました。
唇を縫われる
嫌な予感は当たり、若い2人の研修医は小声で相談しながら私の唇を少しずつ縫っていきます。
「これ、もうちょっと縫っておいたほうがいいね」「もうひと針」
こんな言葉を聞くたびに「本当にこんな若手に任せて大丈夫なんだろうか。傷が変なふうに塞がってしまうのではないか」という心配が私の頭をよぎりました。
もちろん麻酔はしてもらいましたが、自分の唇が太い針でブスッ、ブスッと縫われていくのはなんとも言えない嫌な感触でした。
何とか帰宅する
辛い時間がようやく終わり、処置は終了しました。
看護師さんが妻が来てくれたことを教えてくれ、私はベッドに乗ったまま、妻と対面しました。
妻は気を利かせて着替えや財布を持ってきてくれていました。私は汗をかいたランニングウエアを脱ぎ、ようやく私服に着替えることができました。
先生からは「応急処置は終わったが、数日中に行きつけの歯科医に行き、抜糸の時期などを相談してみてください」との説明を受けました。
会計を待っている間、頭が徐々に冷静になり、周囲を見渡す余裕が出てきました。
ほかにも2組ほどの家族がいて、顔を覆ったまま泣いているような人もいました。家族の誰かが交通事故にでもあったのでしょうか。
「ああ、自分は救急病棟にいるんだな」。そんな実感が改めて湧いてくると同時に、休日の夜さえも人の生死と向き合う緊張感の中にいる病院の先生に改めて敬意と感謝を覚えました。
転倒した拍子に打ったのか、右膝に少し痛みは感じるものの、妻にも励まされ、その日は電車で何とか自力で帰宅することができました。
皆さんもジョギングをする際は十分、気をつけてください!
次回へ続く。
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