脳への磁気治療を試す

体調のこと

うつ病のことに話を戻します。うつ病が悪化して1ヶ月ほどたったころ、私は心療内科の先生からTMS治療なるものを勧められました。

簡単に言うと「脳の前頭葉を磁気で刺激し、うつ病を治療する」治療法です。

実は初回にうつの症状が出て初めて来院したときにも勧められたのですが、「何だか怪しそうだな」と思って断った治療でした。

1回あたりの費用も平日は4900円、土曜日は5900円。保険適用外の治療なので、決して安くはありません。

ただ、来院するたびに「TMS治療を受ける人がずいぶん多いな」と感じていたのも確かでした。

TMSの治療室は2つあるのですが、いつも治療機器から発せられる「パチッ、パチッ」という何かが弾けるような独特の音が休みなく続いていました。

先生からTMSを再び勧められた当時は、薬を飲んでも頭の曇りや胸の息苦しさがなかなか取れず、焦りを感じていた時期でもありました。

初回は無料ということも聞かされ、「だまされたと思ってやってみるか」と藁にもすがる思いで予約を入れました。

輪ゴムで弾かれるような感覚

「まずはソファに座って楽にしてください。そして両手の掌を上に向けてください」

治療室に入ると、看護師さんからこう言われました。

そして看護師さんは私の頭に器具を当てて、こう言いました。

「ちょっとパチッとしますよ」

その直後に、頭の表面を輪ゴムで弾かれたような軽い刺激がしました。看護師さんは器具の位置を少しずつずらしながらその作業を繰り返し、手のひらがぴくっと反応した位置にシールを貼りました。

「これで磁気がきちんと当たる位置を探せました。それではこれから始めていきます」

看護師さんはこう言ってTMSの装置のスイッチを押しました。さきほどのパチッ、パチッという刺激が3秒ほど連続し、その後5秒ほど間隔を置いてまた繰り返すという動作が始まりました。

刺激に対して最初は少し不快な感じがしたものの、次第にそれにも慣れ、看護師さんと話す余裕もできてきました。

100回以上受けた患者さんも

「この治療って何回くらいやれば効果が出てくるんですかね?」

「えーと、最初からすごく効果があったという人は少ないと思います。5回目くらいから実感できるという人が多いですね。当院で多い人では100回以上受けている患者さんもいらっしゃいます」

看護師さんからはこんな答えが返ってきました。

「100回!そんなに受けたら何十万円もかかるな・・・」。

私はそんな心配をしながら治療を受け続けました。

治療時間は合計でおおよそ12〜13分ほどでした。基本的には頭の左側に集中的に磁気を当て、最初と最後に短時間、右側にも当てるというやり方です。

頭がすっきりする

「はい、終了です」

看護師さんに言われて、私はソファから立ち上がりました。ずっと磁気を当て続けられた状態から頭が解放され、何だかすっきりした感じがしました。

意外だったのは、病院から出た後もそのすっきり感が持続していたことです。頭の曇りも軽くなっていました。

看護師さんによると「また数日したら元に戻ってしまう場合も多い」ということでしたが、薬では得られなかった確かな改善の感触がありました。

「あまり期待しないでやってみたが、これはかなり効果があるかもしれないな」

私はそんな期待を抱きながら家路につきました。

初めて治療を受けたのは週末でしたが、週明けに出社しても、頭の曇りが軽減されており、TMSの明確な効果を実感しました。

最初から効果を実感できる人は少ないということでしたが、私には合っていたのかもしれません。

「よし、せっかくなので続けてみよう」

決して安くない費用ですが、私はこう心に決めました。

中学生の患者さんも

その後、私がTMS治療に通い続けるなかで気づいたのは、同じく治療を受ける患者さんの中に、若い人がかなり多いことです。

看護師さんに聞いたところ、「中学生の患者さんなどもいらっしゃいますよ。親御さんが薬をたくさん飲ませる治療を嫌がって、できれば磁気治療で治したいという方もいます」とのことでした。

「中学生でもうつ病になる時代か・・・」

私のようなサラリーパーソンがうつ病にかかるのは不思議ではありませんが、中学生の患者もいるというのは、私が子供のころにはあまり考えられなかった事象だと思います(当時はうつ病という病気がまだ幅広く認知されていなかったこともあるでしょうが。

私はTMS治療を通じて、最近の社会が抱えるストレスの重さを改めて眼前に突きつけられた思いをひしひしと感じました。

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